生まれながらの嘘つき

さいころから嘘つきだ。嘘をついてはいけない・・・と思ったこともない。

毎日すごく小さな嘘をつく。例えば一袋のマーブルチョコにひとつも赤がなかったとか。どうでもいいことだけど、ひとつ嘘を付け加えずにいられない。どうしてだろう?ありもしないことを言ってみたりするんだろう?

その他愛ない嘘が、運命の引き金をひいてしまって、とんでもない展開に巻き込まれたり・・・することもなかったけど。つまらん、いっそ。世界を変える、自分の力でこの世界を変えてしまう。ありもしなかった世界の未来にしてしまう。本当はあった赤いマーブルチョコがなかった世界に書き換える喜び・・・一種のコントロールマニアックな性癖なのか。

赤いマーブルチョコのなかった世界は、私だけの世界で、誰も共有できない、だってそんな世界は過去に存在しなかったんだもの。いっそなかったほうがよかったのかもしれない過去なんて、書き換えてしまうほうがいいのかもしれない。都合よく、自分に優しい解釈で。そんなことができないから、またひとつ小さな嘘をつく。そうやって身を守っている、何から?

確実にあったこと、口から出た言葉を足がかりに世界を解釈する。冷静に読み返してみるけれど、飛び石をわたるように言葉を踏んで進んだ先は、いつも同じ壁の前。どういう順番で進んでも、同じ壁にたどりつく。そしてそこで、途方にくれる。ここには出口がない。

嘘が混じっているから、正しい扉が見つからなくて、外の世界へ出られないのだ。きっと。誰かのついた罪のない嘘が、きっと呪縛になっている。どれだろう?

かつて5歳の私に父がいった
「お前みたいなうそつきは、ロクな大人にならない。」
35年たって、彼の予言が的中している。