冬景色

戦前の唱歌「冬景色」の歌詞は美しい・・・。
さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し朝の霜
ただ水鳥の声はして
いまだ覚めず岸の家

烏啼きて木に高く
人は畑に麦を踏む
げに小春日ののどけしや
かえり咲きの花も見ゆ


嵐吹きて雲は落ち
時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ
若(も)し燈火(ともしび)の漏れに来ずば
それと分かじ野辺の里


50年か前の人の言葉の感覚は、今とは違うなと思う。ただ風景を描いているだけなのに、淡々と詩的なのは、生活が詩的だったからなのかもしれない。水一杯を心して汲みにいくような懸命に生きる、切実さのある世界。