赤坂の裏通り

赤坂というのはちょっとした低山で、案外アップダウンが激しい。

とある事務所、赤坂からも青一からも、六本木からも中間点で、いわば山の中腹くらいにある様子。
だいたいの見当で歩いていった。光ばかり強い冷たい晴天の下、坂道を黙って上る。ハレーションをおこして
道路が光っている。

涼しい風が吹きぬける、路地に出ているゴミバケツの上も。異様なかんじ、白灰色のものが一杯につまっている。
「これなんだろう?具が入ってるから、チャーハンかもよ?」中華料理屋の看板が近くに見える。
「あー見たくない!」彼はゴミのことを言っていたんじゃなかったかもしれない。

憂鬱な気持ちは電磁波を含んでいて、ちょっとしたきっかけで暴風雨になったり、稲妻が走ったりする。
そんな空気が漂う。キオクをデリートする方法、キオクの捨て方がわからない。もう二度と表層に出てこないように完全に封印してしまう方法はないんだろうか。そういう薬、あったら売れると思うな。キオクを保つ薬があるなら、捨てる方法だって本当はあるんじゃないだろうか。