密かに組織更えが始まり・・・

金子光晴は、ずいぶんときんきらした光輝く名前なのに皮肉なほどに暗いアピールだなと思う。
なんだかぶつぶつだめだめぼやいては、人間の匂いに浸りきるあのかんじが肌に合い、さみしくなるとつい読みふけってしまう。詩はアマチャンな私にはよくわからんので、主にジャーナルやエッセイ。

人間関係の組織更えがおこる、という表現が面白い。それ、わかる。他人の心の中で、他の他人や自分の位置関係が知らずに変化している、あのかんじ。裏切られる直前の妙な反応、透過性の悪い態度?(金子の時代の話だとむしろ「個人の対人感覚」が儒教的なモラルの外へ出るか出ないかという問題だったんだけど、もういいかげん平成の世では、それほど大変なハードルじゃない。)その関係の組織更えが始まっている、あるいは終っている、あのかんじ。

はじまりは、ほんの段差や、ちょっとした穴なのだけれど、瞬く間に取り返しのつかない変化を起こしてしまう。「やっぱりあれしきのことが・・・」と、人の関係が不甲斐なく脆いことに驚き、表面的な態度と裏に抱える事実の違いに驚く。他人の世界というのは、本当にわからない。裏切りというのは、間が抜けていて、嫌だ。

んなこと先刻承知じゃない?ああ、いちいち心の奥底で検証するのが面倒だっただけ。

裏切りの前、どんなに冷酷無悲な人も、数秒は挙動不審になって、「ぶるり」と震えるのだ。
経験で、この頃はそんなワナナチに敏感。
あれ?たった今?寒さでまつげが震えるような、さみしさを感じて、相手をみつめる。

地獄の底が見えても、一律どんな相手も徹底的に真直ぐな透明な目でしか、見ないことに決めている。