体育会系「男前」フレンチ

穴倉にこもるように昼夜働いていて、外に出たら、びっくりするほど桜が咲いている。

街路樹はソメイヨシノばかりなので、霞のように曇天の光りをすかして。桜は夕方に見ると、理由もなくふらふらとそっちの方角に誘われる、安吾に言われなくても、花ばかりの桜は、なんともいえず怖い。葉っぱがないから怖いのだと思う。

園芸種だから、葉っぱよりも花が先に出るんだと思った。ここに何本も立ち並んで、車道をアーチで縁取っている木は全部染井村の一本の親樹のクローンで、人工的な木ばかり・・・クローンだから、ソメイヨシノは21世紀に一斉に枯れるのだという都市伝説めいた噂もあるらしい。わかる人が見れば、同じ顔をした樹ばかりずらり20本ということか。ぞわ。

染井村には、その元になった樹がまだ生きているのだろうか?それが枯れて倒れたら、日本中のソメイヨシノが一斉に枯れたりして、ああどうしよう、寒気がする。

今日はアタゴールというお店に行った。フレンチにしてはスパイシーで、力強いかんじのお料理だった。メニューだけど、もう少し数を絞ってあったほうが、プリフィクスだと選びやすい。オリエント・エクスプレス他で経験を積んだ若いオーナーシェフが1人で厨房を仕切っている、シンプルで生真面目で豪快。肉は肉、魚は魚、野菜は野菜でガッツリというかんじ。気概のある気分のいいお店だと思う。ポーションも多めでそれはそれ。難をいうなら、食器がモダンすぎる、カトラリーもフルで出ていたみたいだけど、テーブルが小ぶりなので、もう少し数やサイズをミニマムにしたほうがいいみたい・・・肘が辛い。

さらにいうなら、ここでこそ体験すべき味が、わかりにくかった。もう少しスペシャリテをしぼってほしい。厨房の外も、男性スタッフだったせいか、なんとはなしに体育会系っぽい硬派なムードが漂っていたけれど・・・普段は写真の美しい奥様がサーブ?

それより驚いたのはシェフのお顔。子どもの整形の先生にそっくり!あまりにも似ていて、恐ろしいほどだった。兄弟?名前がぜんぜん違うからなあ・・・年も同じくらいみたいだけどなあ?どういうご関係?生き別れの兄弟とか、どちらかが配偶者の姓?

世間には同じ顔の人が3人はいるというけれど、何もこの数ヶ月にそのうち2人を目撃しなくてもいい・・・この不思議をどうしよう?