樋口一葉

樋口一葉には、パトロンが2人もいた。彼らとどういう関係だったのか、日記を見てもわからないらしいが、お金を融通してもらっていたのは、確からしい。堂々と「お金を送ってほしい」と再三二人に手紙を書き送っている。

彼女の本郷の家は、サロンのようで、多くの有名文士に囲まれて暮らしていたのに、いつも孤独だった・・・という。24歳で寿命を終える前に、斉藤緑雨と出会い。2度話しただけで、ついに自分を理解する男とめぐり合えたと、日記に書いている。

写真を見る限り、美女ではない。むしろ可憐な風貌、その内にあるふつふつとした文才が人を驚かせ、多くの男性をひきつけたんじゃないだろうか。でも彼女はグルービーなんて目じゃなかったわけか。

明治の文豪にとっても、1人の特別な男を見つけることがそんなに大切だったのか。逆にいえば、「一葉」の看板を下ろしてただの女として向き合える相手は、そうそういないということか。でも、そんなに「素」になりたければ、名前を変えて見知らぬ土地に住み、ただの女として生きたらよかったのに。(それは、キャンディーズにはできなかったな、百恵ちゃんの胆力には驚嘆する。)ブンガクでも名をあげ、男も愛もお金も、尊敬も、もっともっと欲しいっていうのが、才能ある人の常だけど。常人の理解を超える強い欲望があったのかもしれない。まあ、金はそうそう回ってかなかったようだ。極短く劇的な人生。

鬼婆も乙女もろくでなしもみんな彼女の自作自演。海の向こうのブロンテ姉妹に通じるような饐えたような世界をどろりどろりと講ずる彼女が、ああいうエンジェリックな顔立ちなのは、なあんか、ずるいんじゃないのよ、と個人的には思う。