ヒョウモンチョウ

子どものころは、あれは蛾だと思っていたので、きれいだと思ったり、好きになるのは背徳的だった。大人になって、蛾と蝶は厳密には区別できないのだと何かで読んで、古い呪縛から解かれたのだった。オレンジのも、緑のも、灰色も茶にも遠慮はいらない。採って眺める趣味はないのだが、いくらでも蝶を熱愛できる。野原で偶然見かけると、頭の中のどこかにランプがついて、ただ、嬉しくなってしまう。

激しいオレンジに黒斑点のヒョウモンが、もう飛んでいる。小ぶりな春子だ。シオンの上に飄々ととまっているのが不思議なかんじ。翅を開いているけれど、でもこれは蝶。じっと見ていると、燐粉が風に少し動いて、微細なアニメーションのように見える。アゲハ系の翅は、心の準備をしないと、強すぎて、めまいがする。

拾ったアゲハの子を育てて、空に放したことがあった。柑橘系の葉を集めるのが大変だった。ついにさなぎから孵って、マンションの5階から空に消えていったあの蝶は、人間以外に初めて育てた生き物だったなあ・・・。

また、夏のキャンプで、朝の森を歩いて、オオルリなんかに会いたいものだ。