上智の塀にミルクを置く
四谷の上智大学の塀に、誰かが赤いストローのささったテイクアウトのミルクを置きざりにしている。
ミルクはずっと見えていてる、私は異常にのどが乾いている、50メートル手前からずっとそこにあるのがわかっていて、いざ、手の届くところまでやってきたら、一瞬「これを飲んだらどうだろうか?」と思ってしまった。
ここが炎天下の四谷でなければ?同じ8月でもここが上高地なら?あるいはシベリアの北端なら?溶けかけているとはいえグリーンランドの南海岸だったら?冷房の効いたスタバのテーブルなら(ストローの色からいってもエクセルシオールのだと思うが?)知り合いの飲み残しだったら?せめて、数秒前にいかにも健康そうな小学生が置いていったものだったら?
でも、現実のそれは、誰が飲んだかわからない、炎天下にどのくらい放置してあって、どのくらい有機的に複雑化しているかわからない、危険な物体なのだ。
ものすごく危険なミルクなのだ。
一度だけ振り返って見て、なんとか家にたどりつき、安全な水道水を飲んだ。
もう誰も惑わされないように、だれか勇気のある人、撤去してください。