土曜の夕方

初夏になると、土曜日の夕方が好き。だって、1日呑気に過ごして、さあ、これからビールでも呑んで、まだまだ呑気に過ごそうと思うひとときだから。もう1日まだ休みもある。前夜は素敵だ。

同じくらい好きなものは、土曜の夜中に衛星放送でやっている演劇人の舞台裏話。どんな風に舞台をつくったかみたいな裏話は、舞台そのものよりも面白い。まだカタチになっていない、とはいっても舞台って形になるというには流動的だけど、本番を前にした前夜なかんじが、さらにもっと前の企画段階というやつが、そういう匂いが好きだ。まだ何も始まっていないけれど、始まる予感のする、あの空気。

かつて演劇みたいなことをしていたことがあった。部室にいくとみんな音楽を聴いたりして、だらだらしている。こんなにのんべんだらりとすごしている人たちが、演劇なんてできるのか?と、不安になったものだけれど、誰かが始めると、先輩たちは別人のように何かを作り出そうとし始める。そしてなんだかなんとなく、ぼんやりとカタチができてきて、しばらくすると「演じるべき何か」が現れてくるんだけど・・・あの小さな種から、何かが出来上がる感じ・・・あの気分が頭のどこかにまとわりついて離れない。

どこかにある種を見出して、それを育てていく楽しさ、思ってもいなかったものが目の前に現れてくる不思議な魅力に、いつまでも未練を断ち切れずにいる。だからどんなものであれ、モノをつくっている人の話を聞きたい、せめてあの雰囲気をシミュレーションしたいと思う。作家の日記が好きなのも、作品そのものよりも、それを生み出すシステム、モノを作る人そのものが好きなのだろうかとも思う。

土曜の夕方の気分。まだあと1日ある、まだ始まらない、いつまでも前夜なかんじを愛するのは、創造の神様から見向きもされない、私の負け惜しみ。何か作りたくても何も作り出せない私の悪あがき。

初夏はいいね、いつまでも明るくて、本当はもう夕方なのに、まだ明るいから、いつまでも午後のまま、時間が止まっているみたいで。

今日もキュウリの袋をぶら下げて、歩きながら、愛する土曜の夕方をちびちびと味わう。夕食は水餃子、強力粉に熱湯を入れてこねて、延ばして、味付けをした豚ひきをつめて、ゆでる。コウズで食べる。キュウリと豆腐と蒸したキャベツのサラダは、黒胡麻を擂って、ごま油と豆乳、花山椒でアクセントをつけたたれで。ワインはマケドニアカベルネ・ソービニオン優秀な700円!

いつもこの餃子作業をめぐって、兄弟げんかになる。本日も泣く人、癇癪を起こす人あり。仲良くやってくれよ〜でもおいしい。