ヘンリー・ダーガー

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で原美術館へ行って来た。

死後、大家さんが部屋を掃除していたら膨大な数の自作本と挿絵が見つかった。ヘンリー・ダーガーはほどんど路上生活者のような身なりをして、生活するだけの仕事をするほかは、自分の部屋で自分の内側の世界で物語を描いていたけれど、それを他の誰も外側から理解することができなかった。それだけでもう絶対に行かなくちゃ、彼の暮らした部屋を見なくちゃと思った。

最初の部屋にある闘いの場を描いたコラージュがすごい。どうしても描かなくてはならない世界に追い立てられて、手に入る材料で使えそうなものを全部使って、強迫的に描いている風なのだ。闘う人、軍隊、殺す人、殺される人、コラージュで集められた人が何重にも折り重なって、膨大で取り留めのない人人人。古新聞で裏打ちされているコラージュの上に、さらにドローイングや彩色がのって、見ればみるほど、重層的な引き込まれる世界。

世界というものは、膨大なディテールの集積で、世界のほんの一部を描くだけでも、とりとめのない仕事なのだと思った。理解するには、煩雑すぎて、膨大すぎて、もう手に負えないと、思ってしまう。

適当に省略してしまわないかぎり、世界を1人で相手にするのは、無理なことなのだ。
それは私のつまらない毎日だってそうだ。

ダーガーにはそうする気がなかったのだろうか?

画風はローマの落書きのようでもあり、子供の絵みたいないわゆる正式な教育を受けていない在野の画家で、アウトサイダーアートの雄でもある。うまいとかなんとかいうよりも、美的にどうということよりも、絵の背景にある世界のものすごさに、それを生み出した部屋と、今となってはわからないダーガーの生涯や、彼の感情に圧倒されてしまう。

諸星大二郎の漫画に、人間が裏返しになって逆さに釣り下がっている繭の洞窟というのが出てきた。当人は繭の中で胎児のようにやすらかに、仙人かなんかに昇格する孵化の時期をまっているのだそうだが、内臓が外側にぶら下がっていて、無防備この上ない。そんなグロテスクなもんとても見ていられないけれど、じっと見てしまうだろうなと思う。おもわず連想してしまった。

諸怪志異(1)異界録 (双葉文庫名作シリーズ)

諸怪志異(1)異界録 (双葉文庫名作シリーズ)

誰にも理解されずに、死後シカゴで発見された老人の物語。あたかもシカゴの町にそっと保存されていた遺跡のような。自由というのとは違う、反復するモチーフや、パターンで埋め尽くされた面などを見ると、何かの規則に縛られた息苦しさ、不自由さを感じる。神の目?前に幼児洗礼からの宗教に苦しむ友達が言った、何をしていても「神が見ている」という不自由さ、ぎこちなさ、に近いものなのか。

夢の世界を描いたという、でも堅苦しい軋むようなファンタジー。肖像写真の老人の目は、どこまでも澄んで底なし、見ても見ても見つくせない湖底をのぞくような目。

私の中では、当分整理できない、消化不良のままになりそうだ。


http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html

でも、おしりかじり虫〜

http://www.youtube.com/watch?v=Gs9cS0ZtMWw

NHKみんなのうた おしりかじり虫(DVD付)

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かじり屋って何よお〜

おそるべし、うるまでるび