有楽町で逢いました

偶然、有楽町の駅の近くで彼女とすれ違った。

学生時代は、ほとんど話したことがない。友達の友達で、ちょっと遠い存在だった優等生。その後、その友達の結婚式で「将来がわかんない」などという話をしていた。本気にしたわけじゃないけど。

何でもできる人だった。人柄もいい、本上まなみ似でかわいい。日本の米文学を牽引する学者の直弟子で、後に新進気鋭の翻訳家としてデビューするほんの直前、「ミライが見えない」とか言っていた。

彼女の思う「ミライ」というのは、どんなものだったんだろう。彼女は自分としては成功したんだろうか、そうでもない状態なんだろうか?人の才能で相撲をとるみたいに考え込む。だって、今日すれ違った彼女は、売れっ子すぎているのか、土気色の顔でなお痩せて、小さくなっていたから。いまや有名大学で教鞭をとって、立派な学者で・・・でも声を掛けられないかんじがして。

ま、もっともね、そんな学者先生に声をかけるにしては、あまりにも今日の私は、二人の子どもを追い立てて、猛烈に急いでいてね、時間もなかったの。もうすんごいオッカサン状態だったのよね。

「あんれまあ所帯じみちゃってかわいそう」って思われるのもなあ、ってミエ張ったかな?ちょっとは。

「好きだけど別れよう」っていう気持ちが最近わかるようになった。自分を守るために必要なこともあるんだろうな。情けない、哀しい別れだけど、そう切り出すしかないこともあるんだろう。人間それなりに生きていると、のんべんだらりとでも、ちょっとはいろいろわかるようになるもんだなあ。

エストの前を通りかかったら、子どもがショーウインドウに立ち止まる。「おかあさん、見てよ、このクッキーってさ、ピングーがお菓子屋で万引きしてつかまったのを同じだよ」というので、見たらベリージャムが丸くのったドライケーキだった。あんまり大声で言うから、店員に「かごをどうぞ」と差し出されてしまった。ばら売りしてくれるのが、あそこのいいところ。で、結局、ペンギンの万引菓子と、バターサブレと、パルミエを買って帰った。大きくて安いし、美味しいもんね、オーソドックスで。