女の最良の友とはライバルのことなのである

大学時代に、とても美しい知人がいた。彼女には別のまた美しい友人がいて、よくふたりはつるんで歩いていたけれど、それはまるでバーバラ・クーリーの「しらゆきとべにばら」みたいで、男子学生の注目の的だった。
数年後、1人が先に結婚する。相手はいわゆるアントレプレナーで成功している人らしく、都内の有名レストランで豪華なウエディング。花嫁は若くて美しく、女ながらにためいきが出るようだったのだが、式の最中に「友人代表べにばら」は小声でささやく

「ねえ、あのブーケってどう?あんな大輪の白百合をブーケにもつ神経って信じられる?あまりにも自分に自信がありすぎると思わない?あのカサブランカくらい自分は高嶺の大輪の花ってわけよね、つつしみがないわ。」

カノジョは、美しい顔をゆがませて、意地悪そうに笑う。普段はお互いを尊敬しあう麗しい二人なのである。嫉妬みたいな醜い感情など、持ちたくてもそんなチャンスもなさそうに、人に愛され、賞賛されて、陽の当たる場所だけを歩くような人種なのである。それでも、心のうちには「彼女にだけは負けたくない」という強い気持ちがあるんだなあ。

別な言い方をすれば、お互いに恵まれていて、堂々とライバルとして張り合えるほどの僅差の相手がいて、やはり彼女たちは幸運なんだと思う。遠慮はいらない、お互いに冒しがたい美徳を誇っているんだから。どちらがより美しくより裕福で幸福か、雲の上の女神の争いみたいなもんで、羨望を通り越して、もうエンターテインメントの領域だよ。男の趣味が違ったのは、もっけの幸いだったんだろうなあ。

もし資格云々をいうとしても、彼女はまさに白百合のように凛とした美しさをもつ花嫁に違いなく、よしんば大輪のカサブランカに自分をたとえるのが行き過ぎだったとしても、いいじゃないの、一生に一度のお式にくらい堂々と自分に自信を持ったって。

その後、すぐ故郷に帰ってしまったべにばらさんは、どうなったかわからない。しらゆりの彼女もアメリカに行ってしまって、年賀状も来ない。

ただ、私の記憶の中で二人はいつまでも張り合っている。

筑波大駒場に入った優等生が、やっと遠慮なく暮らせる環境に入れて、生きるのが楽になったという話。普通の小学生に囲まれて、周りに合う話題にレベルを下げて生きるのが辛かった、無理だったんだって、ようやく自分のいるべき場所にたどりついた、遠慮なく思うところを言っても、浮かない、楽だ、楽しい!って。茂木健一郎も似たようなことを言っていたなあ。

超高レベルの世界って、そんなもん?