緑色のペディキュア

知り合いにいつも高いヒールの靴をはいて、夏はサンダルからのぞくプロフェッショナルなペディキュアがきれいな人がいる。それが実にかっこいい。

ある夏、玉虫色に揺らめく彼女の金緑のペディキュアがうらやましいと思って、私もしようかなと思ったことがあったけど、ひどいまき爪なのであきらめた。これは普段忘れていることだけど、伸びると親指の爪の角が指に食い込む。角を落としておかないと、全体に体の具合が悪くなる。なんか調子が悪くて、よくよく考えると、指先の角質で感じないけれど、実はまき爪が痛いことに気づくのよ。ささいな故障だけど、存外全身に影響があるもんで。あわてて手入れをすると、沈んだ気持ちとか、イライラが消えて、また爪のことを忘れて、むやみに不機嫌になってしまったと思う。手入れをしたばかりは、足指がだるくて、痛くて、やっぱり痛かったのに、体が気づかないふりをしていたんだなと思う。変に足がむくんでしまうときも、爪を治すと治ったりして。

そんなことや、爪のカタチがきれいじゃないこともあって、染めないでいる。

玉虫夫人はお金持ちのマダムで、それこそパーティー用の必要経費で爪の手入れをしている。外国ではなんでも、爪がきれいに手入れされていないと、ナメられるんだって。「まさか主婦が自分で家事をしているのか?」という疑いを持たれるのは、不名誉なんだって言ってた人もいた。20年前に聞いた話だけど、外国では公邸に使用人もいる大使も、普通は東京では官舎に住んでいて、子どもを公立に通わせて奥さんは家事をしている。それを対外的には隠さなくちゃならないから、家事をするのに手袋と手の手入れが欠かせないんだって。

まあ、玉虫夫人は、夫君の教育方針で育児だけはいやいや自分でしているけれど、他のマダムみたいに本当はナニーを雇ってお買い物に行きたくてしょうがないし、自主的に家事もしないから、そういう苦労はないみたいだけど。なんとなく不安定な家庭で、近所のケータリングと、レストラン、シェフを呼んで料理してもらうという食生活。お金を使い散らかしているという気がしてくる。

それから強烈なのが夫君の母国から「国際クール宅急便」で姑が定期的に息子に送ってくる冷凍パック「完全菜食の手料理」これは怖い・・・やる気なくなるでしょ。

美しくてかっこいいマダムとしては、50をすぎてもローティーンの娘と競って臍を出し、ホテルのプールで超ビキニを着こなすためには、家事なんて・・・やっている場合ではないってことだ。それはそれとしても、なんだかすごくしんどそうで、気の毒だなんて思うのは、単なるジェラシーの裏返しなのか?お金持ちなんて面倒、小さく普通の生活をしたほうがシンプルでよし、と本気で思っているのか?自分でもよくわからない。

期せずしてばったり会うと、居心地の悪い気持になるんだよねえ。

お金は大事だけどねえ。もしお金がもっともらえるとしても、今の経済規模の200%がマックス扱いきれる金額のような気がする。分相応ってことはありますわよね。

それとも、それはそれなりの世界が拓けてくるんだろうか?どういう皮算用なんだろう。