ジェラール

国立科学博物館の地下2階には、人類学のブースがある。マンモスの骨で作った住居のレプリカとか、アルタミラだのラスコーだのの資料写真とか、なぜか古代はヨーロッパ系。

なかでもジェラールはすばらしい。リアルなクロマニヨン人の復元像。ホモサピエンスの勢力に負けて、消えたといわれる人類の潮流だ。ああ、でも完全に消えたわけじゃなくて、中にはフレンチアルプスの山の中でホモサピエンスと念性をもった稀少なグループがあったにちがいない。とジェラール・ド・パルデューにそっくりな彼を見ると思う。だからジェラール。
[rakuten:book:11616148:image]隣の女
学者の役だろうと、王様だろうと、芸術家でも革命家でも、知性や教養や繊細な感性が裏づけされている役でさえ、食欲とか性欲とか金銭欲とか、ストレートな欲望を最優先するような、野生的で予想のつかない感じがする。俳優としての存在感は、代役のいないすごいものがある。でも男性としての彼の人気というのは、あんまりピンとこないんだよねえ、と個人的に思っている。クロマニヨン受動体がないだけ?

なんていうか、ちょっと粗野で、マッチョで毛だらけのマニッシュさというのが「セクシー」と直結するには、ある程度の遺伝形質が必要なのではないだろうか。

筆でなでたような金色の帯の中に心霊写真めいた顔型が浮かびあがる不思議な写真を後生大事にキッチンに貼っている友人がいる。それは「ドュ・パルデュ」ナンダって。サラマンカ大学に留学していたときに、カフェにいたら、そっくりな人が通ったので、夢中で写真を撮ったんだけど、ブレブレになってしまった。そっくりなだけの普通の人かもよ?と聞いたら、そんなことはないんだって本人に確かめたから。そんならさ、お願いして写真を撮らせてもらえばいいのに、もっとちゃんと。よくわからん。ああ、ここにもクロマニヨン受動体。