適当な理由

「教養が違うから一緒に暮らせない」と双子の片割れの苗子が千重子に言う。川端の「古都」の話。たまたま実験みたいに別々に育った姉妹が偶然出会い、片方はお嬢さんで片方は北山杉を育てる村の労働者で。この世にふたりといない組み合わせの人間同士が、一緒に生きられない理由が教養というのは、それは片方の意地ってもんなんだろうか。なんだか適当な理由すぎる。川端は心身を病んでいたらしいから、適当に流れてしまったとか?どうなんだろうか。

あきらかに育った環境が違い、考え方が違うことで、多分お互いに気まずいことがあるから、生きる世界が違っていたから。理屈の上では充分な理由なんだろうけれど。

姉妹の物語は、苗子がひそかに千重子を店におきざりにして去っていく、そしておそらくもう戻らないということで完結させてしまっているけれど。現実の人間はそんなに理性的で、きれいなものなのだろうか。人ときれいに別れるのは、実は相当難しいんじゃないだろうか。