きれいな人

最近、バレリーナのNさんと知り合う。友達がパリに住んでいて、ときどき本場のレッスンを受けたり、劇場へいくのに渡仏するんだそうだ。華奢でのびやかな体をしていて、ほんとうにきれい。

もし彼女になれたら、どんな気持ちだろうと思う。

朝一番の公営プールの、まだホイッスルのなっていない。鏡みたいに波ひとつたっていなくて、ピン!とした水面。そこへ一番に飛び込んで、表面張力を感じながら、シュプールをつける!素敵。私は手付かずの水面が大好き。毎朝、鏡を見るたびに「自分がきれい」だということを確認するって、それみたいなワクワク感じゃないかと想像するの。彼女みたいなお化粧をして、アンクルのついたヒールにキャミソールドレスを着て、強気で生きていけそう。

きっと話したければ、誰にでもぜんぜん余裕で時間をもらえるし、遠慮も自粛も反省もぐっと少なくていい。楽しいだろうな、なんか。もし、私がきれいだったら、すぐ換金できない話題でも、相手は何かしら楽しいとか、嬉しいとか、代償があるもの。取引が成立する。

今の私には「きれい」が必要。でもそれは絶対に不可能。