ぬえ

ぶどう園の近くにいる。子供を連れていると、丘の向こうから犬のような雰囲気の動物が群れでこちらを覗っている。厳密に犬ではない、鼻のあたりがあいまいなかんじなのだ。

そいつらは、やがて標的を決めたように、私のほうへむかってくる。はじめはゆっくり、でもだんだん確信的に、その群れはこちらへやってくるのだ。そうじゃないといい、と思うけれど、間違いなく狙っている。もう逃げようがない。

キケンを察して、子供たちをブドウ棚の上に逃がす。高いところなら安全だと思ったのだ。でもそのイキモノは犬のように四足で歩いてくるが、ブドウの蔓の近くで立ち上がると、姿がすーっと変わり、猿に似てくる。猿だから蔓をどんどん登れる。棒をもってはたき落とそうとするが、牙をむいた一瞬の顔が、ホログラムのように「人」の顔になって、私を確認する。その犬-猿-人の合わさった、ひどく残忍な性質のそのイキモノは、棚の上の子供たちをあきらめて、私の両足を喰いちぎる。

昨日の夢は恐ろしかった。あいまいな動物の顔が一瞬人の顔、しかも見知った人の顔になった、それは生きたまま脚を喰いちぎられるよりも、恐ろしかった。

夢の話をすると「それは鵺だね、でなければキマイラか。」そんな聖獣じゃないよ。リアルに獣の匂いがしたもの。それにいろんなイキモノが合体しているんじゃなくて、境目があいまいなかんじで変貌する怪物なんだもの。そしてあいまいな身体に照準器のようにあの「顔」がひらめいて現れる、一瞬だけ。

もう眠りたくないくらい、怖かった。