あんたはまるで岩のようだ

ときどき、いる岩男。

地下鉄に乗っていて、ドアの前に立っている。こいつきっとどかないな・・・って予感。案の定、降りようと思ってその人の後ろあたりに立ってしまうと、人がたくさん降りるのに、そいつはドアの前に立ちはだかる、都会の人の流れに逆らって、何かの反逆のように動かずにがんばる。そういう愚鈍で不器用な人を他の場所なら愛しく思うけれど、地下鉄に乗っているときだけは、どうしても好きになれない。むしろどんどん流されて、一度は望まない駅に足を下ろしてしまうくらいのタイプを私は愛する。女なんて身勝手なものなのよ。

今日の岩男は背の高い、ミバのいい、背広の若い人で、ラッシュになれていないわけでもなさそうだし、トクに鈍感そうな雰囲気でもなかった。でもひょっとして、こいつはそうか?と思わせるガンコなニュアンスの肩をしていた。手縫いステッチが入った高そうな上着なのに、岩男。いい靴をはいているのに、岩男。どうしてお前は岩男なの?