mama mia!

映画俳優なら、メリル・ストリープがいちばん好き。

子どものころ「ディア・ハンター」や「フランス軍中尉の女」を見て、ほんとうに性別を超えた才能のある人だなと思った。脆く哀しげな表情をすると今にも壊れそうだし、氷のように目の前の弱者を殺す姿にも信憑性がある。彼女を見る人の感情をぐいぐいひっぱっていく巫女のような・・・美貌ではない、でもきっと祝祭の女神になっていた古代ギリシャならば。

演技は存在芸術なんだと思わせる仕事をフィルムの中で構築できる人だと思う。その気ならば、彼女が本気で仕事をしたら、まるでかの大野一雄のように、一振り一振りをずっと見ていたいと思わせる存在。「存在」のおもしろさ、究極なのではないだろうか・・・。

案外普通だったりするんだろうな。メディアのカーテンを超えた向こう側で、生活する彼女はすぐ人と親しくなるようなうな素直な人なんじゃないかと、勝手に創造している。

ギリシャロケを敢行して、太陽が美しい!このミュージカル映画は、でもかなりふざけている。彼女が主役である意味?歌える女優なら他にもいるでしょ?でも多分これでいいんじゃないだろうか、この映画は。いろんな映画やショウの要素を上手に編集して、歌って踊って楽しむための口実にする・・・騒ぎたい!幸せになりたい!歌って踊りたい!21世紀に欠落している祝祭の役割!みたいなものをもたせることは文化状況を良くする、はず。

おとぎばなしだというなら、魔女と乙女が親子で、たくさんいる王子様関係が地味なのが、ちょっと物足りなかったんだけれど。祝祭の女神ばんざい・・・ということで。

ギリシャロケだし、映画なんだからあまり舞台に忠実にならずに、もっと地中海の神々のムードやエピソードを使えばよかったのに・・・ギリシャが使いこなせてなかったのが、ちょっと残念。別に舞台はロンドンでもNYでもよかった気がする、あれだと。