私のまわりのやさしい人たち

Hさんは、すごく背が高いと思っていた。体つきが大ぶりで頭が小さいから余計そう思っていたけれど。
どこかへ行く途中公道を歩いていると、大きな動物と小さな動物が並んで歩いているみたい。限られた時間で懸命にもろもろの質問をする私は、なんだかキーキーうるさい鼠みたい。聞いているんだかいないんだか、あちらは条例違反の歩き煙草をしながら、一応ちゃんと答えてくれるけど、内心死ぬほど面倒くせえと思っているのがありありとわかる、不機嫌な大型犬みたい。気の毒だって思う。どうでもいい(私にとっては大問題)ことに答えなきゃいけないHさんと、聞きたくもない(不機嫌になるし)ことだけど、真面目だからやむなく訊く私。
ある日のエレベータ。大柄な20代の若者がどやどや乗ってきたら、いつも背の高い、まるで夏の夕方の影法師のようなHさんが、一瞬で小さく縮んでしまった。錯覚?どちらが?本当は案外小柄な人だったのかも。

Mくんは、中肉中背、まず怒らない。「怒ってる?」って訊くと「怒ってないよ、どうして?」と言う。超多忙な時間に気まずい電話をしてしまったから「ごめんね、迷惑だった?」とメールをすると、あわてたみたいに電話をくれる「どうしたの?心配なの?ぜんぜん怒っていないよ、大丈夫だよ。」そしてこの頃は、「あんまり『ごめんなさい』って言ってたらだめだよ、鬱になってしまうから。まわりの世間でおこった不都合のほとんど、大方は君のせいじゃないってこと、ちゃんとわかっているよね?」だって・・・みんなすぐ不機嫌になるんだもの。

そうなんだもの。