母の目が醒める。

今日の朝から、母が突然目覚めて、会話が成立する。ほぼ一週間昏睡に近い状態だったのに、今朝から意味のあることを話し、反応する。ずっと耳は聞こえている、と医者は言っていた。そうだったのだろう。

昨日の夕方からコドモが声をかけると目をあけたり、わかっているそぶりはあった。

ほぼ一週間ぶりに母がしゃべるのを聞く。「背中が痒いんだけど、見てくれない?」といっていたのだけれど、「背中」しかわからず、また疼痛が始まったのかとナースコールをして慌てる。よーく聞いてみたら結局「痒いだけ」だとわかり、一堂苦笑。

小康状態だし、父や弟もいる、母の友人など来客もあるらしいので、ひとまず帰宅。実家に寄って掃除をしたり、植木を整えたり、洗濯物の整理をして自宅に帰ってきた。ここ何週間も緊張続き、家も片付けないとなんとなくがたがたしている。そんなこんなで雑事をしていたら、もう夕方だ。

病院にいっても別にすることがあるわけじゃない。必要なことは医師や看護士がしてくれるし、足手まといなので手伝いようもない。ただいるだけ。どうしているのか?というと動機などないみたいな気がする。すごく偽善的なかんじがする。ここにいるべきだから・・・いる。あるいはするべきだと判断する作業があるからする。やさしい気持ちとか、思いやりとか、そういうものとは無縁なかんじだ。手足を動かして、物量的に作業をこなすだけ。前に孫を親に見せるのは「義務」で、いわば「兵役」みたいなもんだと言ってた人がいて、硬いなあ、と思ったけれど、今の私が用にならないのに病院にいたり、実家の家事をしたりしているのは、まさに「義務」というかんじなのだ。第一病人は、ぜんぜん私なんておよびじゃないかもしれないのに。

いったい彼女は、本当は誰に会いたいのか?もし家族が知らない人だったとしたら?その人が病床の母を訪ねてくる可能性は極めて低い。これでいいんだろうか?大丈夫なのか?納得がいくのか。まったくわからない。