日本男児たるもの・・・

母の弔いは花葬だった。デザインや花種を選んで、いろいろ考えていたときには、花壇のことしか想定していなかった。好きな花は何か?と花屋に問われて「バラとカスミソウで乙女チックにしてくれ」という父の顔を思わずまじまじ見てしまう。庭仕事を愛する初老の女が好きな花がそんなことでいいんだろうか?

花屋にしても「やりがい」というものもあるじゃないの。盛りのダリアと新種のピンクカラー、カトレアとラン、それから本当に母が毎年丹精していた白百合を入れて、大量のスプレーマムで豪華な花壇になった。
読経や焼香が終わり、棺に別れをという段になって、思わぬ事態がおこる。

その色とりどりの百花繚乱を棺に納める段取りだったのだ。赤やピンクや白、ねむり姫のように華やかな花が母のまわりに詰め込まれる。バラやランの甘い香りがたちこめる。花の中に澄まして眠っているような顔を見ていたら、こみ上げてきてしまった。不覚にも嗚咽しそうになり、腹に力を入れてなんとかこらえている。コドモがつられて泣き出してしまう・・・華やかでゴージャスな花一杯の棺がどうにも悲しく悲しくてしょうがない。