背広を着た人

いわゆるサラリーマン家庭に生まれ育っているので、大人の男はどうあれ背広を着ていた。
あれは、似合わなくても似合っても、制服めいて、着て働かざるを得ないことが多いから、似合うとか似合わないとかいう問題ではないのかもしれない。似合わないなんてことあるわけないと思っていたけれど。

カジュアルな格好をしていると、まばゆいばかりに美しいのに、同じ人が背広を着ると貧相・・・になることがある。もちろん上背もあって、多少ピシッとはするけれど、彼のどこかルーズな生き方がカッチリしたラインと合わない?スクエアなラインの中がハリボテなかんじ・・・ふうん、モデルみたいでも似合わない人もいるんだよ。
中身のない、単純な人間に思える。案外つまんない奴だなって。

「背広」日本語としては意味不明?やはり当て字で、savile rowという仕立て屋通りがロンドンにあってあのデザインの発祥地?説はいくつもあるけれど、これが気に入っている。

背広が似合うと、ああそうなのか、こいつも秘密結社かと思う。普段着のときはわかり合っているかに思えても、実は私の常識や日常感覚では理解も解決もできない「大人の事情」をいくつも抱え、違う人格に支配されて秘密の仕事をはじめる・・・みたいな遠い存在に思えてしまう。

だから背広を着た男性はミステリアス。