本当の職人というものは

仕事をしていく上で、職人が最高位という設定の人は案外多い。他にはアーティストとか、ビジネスマンとかいろいろな称号があるものだ。ある程度クリエイティブな仕事で、目の覚めるような巨額のギャラがなだれ込んでくるようなタレントは一握り。だけど、そういう人であればなお、コアなところでは恐ろしく細かなこだわりで根気よく丁寧に仕事をして、それなりの成果を出しているんじゃないかと思う。じゃないかと思うあたり、私も「職人崇拝者」の傾向が強いのだろうな。

さて、この間取引先と話していたら「本当の職人っていうのはさ、受けた仕事をいつも妥当なレベルでこなす・・・っていうことなんだけど、チームのリズムを乱さないように締め切りは厳密に守るし、それだけじゃなくて、場合によってはきちんと自己主張するエネルギーのある人間の事を言うんだよ。」なんだか熱のこもったかんじで言うので、聞いていて照れてしまった。

実はこの話題の前に、納得がいかない扱いに私にしては清水の舞台から飛び降りる勢いで「今の扱いが続くなら、お付き合いを辞める。」と宣言したばかりだった。「それならこれまで。」と言われるだろうと思っていたし、それはそれでしょうがないと覚悟して言ったことだった。でもそうはならず、ちょっと感動してしまう。しかも普段目下を褒めない世辞のない人なので、ひょっとして私のことじゃなかったとしても、最大限の褒め言葉をいただいた、とひそかに思いこむことにする。

大人になると「よしよし」と褒められることがなくなるので、こういうことは心にとめておくことにするのだ。正解じゃなくても。