あと10年

地下鉄半蔵門線。九段下から乗っていた60代の男性二人連れがいた。

「こうやって誰かと二人で回ると、売り上げが半分になるけれど、仕事を覚えられるチャンスなんだよ。例えばさっきもあそこで客が健康保険をやめるって言ってたけれど、他の知識があれば、辞めずに他の商品をすすめたり、乗り換えたりする方法を提示できたはずだよ。仕事をしながら、そういうポイントも勉強していかないと・・・。70まであと10年稼ぐんだろう?月50万は売り上げないと、やっていけないよ。どうするんだ、そんなことで!」
「はい、じゃあもっと大口を取らないと・・・」「小口でもいいんだよ、それは、あとで教えてやるよ。」

この二人は同年代、先に保険のセールス業界に入った人と、あとから転職してきた人なんだろうか?商売の悲哀を披露しながら、先輩風を吹かせて、発散?しているんだろうか。60歳をすぎて、新しい仕事を始める、どんなに大変なことだろうかと思うと、顔をあげられずに座っていた。

「ここで降りるぞ。」おずおずともう一人がついていく。三越前、二人はどこにいくんだろうか?