大谷友介

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あーまたそんな!ベルリンに行くなんてひどすぎる。

ベルリンのあの冷たい空気、人々の温かくて乾いた心。若い日々をすごした幸福な孤独を思い出す。ジョン・ドリトルは世界を旅してのどかな牢屋につながれるたびに、運動不足でちょっと太ってしまったりしていた。あれみたいな。
誰にも邪魔されず、まあなんとなく気にはかけてもらって、一人で淡々と生きていける場所という気がする。泊まるお金がなくて、階段の下にまるまって一晩すごしたり、オールナイトの映画館でピーナッツをもらったり、東京で必死に稼いだお金を握って、憧れのベルリンへ行ったのは1989年。もちろんなんの地縁もなく、生まれた初めて母国を離れたたった一人の東洋の若者として数日、しがみつくようにすごした。

もう大人だから、できたら一年ベルリンで暮らしたい。寿命があるうちに、一年だけでいいから。
叶わぬ恋のようなものだ。