田川の若大将

ここ数日、料理本のために調味料を集めている。卸の業者にあたらないで、どのくらい小売店でリストのものが買えるのか?という実験のようでもある。本を買う人は、一般の人だから、じかにお店で買えないとしょうがないもんね。

とはいえ料理人推薦のこだわり調味料はそのへんでは売ってないんだなあ。

料理環境も画一化がすすんでいて、「一般品」と「ぜいたく品」は売っている場所がまったく違う。メーカーも大手がほぼ独占していて、個性のある中小の製品は、比較的小規模で商売になるであろう分野でもありえないみたいだ。売れるものっていうのは、CMで知っているとか、知っているメーカーだとか、そういうプロファイルが必要ならしい。とはいえ、探さなくてはならない。

デパートは物産展をしているのと、いいものや珍しいものの顧客が安定しているので比較的地方メーカーの逸品が案外ある。高級スーパーも同じ。

しかし、築地の場外市場は思ったよりもものがない。

思い当たるところを覗きに行った。前々から珍しい美味しいものを扱っている割烹素材の田川に最後に行ってみた。外にいた若大将に書付をみせてちょっと聞いてみた。
「みりんは、扱いないよね?」店の奥に聞いてくれる。扱いはないらしい。恐縮して立ち去る。そのあと、悪あがきで市場の中をうろうろして、だいぶたって、後ろから声をかけられた。田川の若大将だ。

「そのみりん、特注品だから、注文しないと手にはいらないってよ!」

いやあ、河岸の人は粋だ。さっき話したのは15秒くらいだし、メモなんて数秒しか見ていないのに、私を覚えていて、見かけたからって親切に教えてくれたのだ。


最近ね、世知辛い思いばかりしていたので、おもわず大声で
「ありがとうございますっ!」って叫んじゃいました。

親切な人たち、人情っていいねえ。